鈴鹿市 美容院 ヘアサロン カットハウスサロック

涙が止まらない

「希望の犬」   愛媛県松山市に市営の団地があります。  1993年の夏、この団地に住んでいる石井希ちゃんと久保田望ちゃんは幼稚園からの帰り道の川で流れている  『小さな命』  に出会いました。  二人のノゾミちゃんは流れていく段ボールが気になり、川岸に引き寄せて段ボールを拾い上げました。そして二人で恐る恐る段ボールの中を見てみると、中には小さな白い子犬が不安そうな表情で入っていました。  二人は段ボールからその子犬を出してあげました。 そして地面に立たせてあげました。生後間もない男の子でした。 すると子犬は何故か同じところをぐるぐると回ってばかりいました。  二人は  『回るのが好きな犬なんだね、変ってる』  『でもこのままほっといたら死んじゃうよ』  と言いながら帰り道を歩きました。  そしてそのまま二人で久保田望ちゃんの家に連れて帰りました。 すると当然のように望ちゃんのお母さんに  『団地だから犬を飼ってはいけないの』  とあっさり言われてしまいました。 市営団地だったのでペットは禁止だったのです。  そこで、二人は子犬を『じっちゃん』と呼んでいつも親しくしていた団地の自治会長の坂本さんのところに連れて行きました。  坂本さんは子犬を抱きあげて  『ほう、捨て犬か』  と子犬を優しく地面に立たせてやりました。 すると子犬は塀にぶつかったり置いてある自転車にまでぶつかったりしました。  坂本さんは思いました。 この犬は目が見えないのではないか?と。 そう坂本さんが思っていると二人が聞いてきました。  『団地で飼ってもいい?』  と。  坂本さんは頭の中で色々な思いが錯綜しながらも  『団地では犬や猫を飼ってはいけないという規則があるんだよ。 お父さんお母さんに話して、団地の人の知り合いで飼ってくれる人を探しなさい』  と二人に言うしかありませんでした。  二人はすぐ家に帰って知り合いを探してみましたが、飼ってくれる人は見つかりませんでした。  再び坂本さんの所へ行きました。 坂本さんも困った顔になりながら  『元の場所にもどしておいで』  というしかありませんでした。  坂本さんは心では、かわいそうと思いましたが、自治会長の自分がルールを破ることはできないので、そう言わざるを得ませんでした。  その時近くを大切に飼われているような犬が通りました。 それを見た望ちゃんの  『同じ犬なのに捨てられたり、飼われたりするのは変だよね』  と言う言葉に坂本さんは何も答えられませんでした。  二人は白い犬が捨てられた川まで戻り段ボールに再び入れようとしましたが  『このまま川に流すのはひどすぎるよ』  『じゃ、岸に置いていこうか』  と言って岸に置こうとしました。 そして立ち去ろうとしました。 すると子犬がクンクン泣きました。  二人のノゾミちゃんはこのまま歩く事は出来ませんでした。  『やっぱり、かわいそうだよ』  このまま置いていくと車にひかれたり迷い子になって、ケガをするかも知れません。 そう思った二人のノゾミちゃんは、大人たちには内緒で団地のそばの自転車置き場で子犬を飼い始めました。  団地に住む子供たちと協力して。見つからないように段ボールに入れて、子供たちが当番制で餌をあげるようにしました。  ところが子供たちが幼稚園に行っている時に、子犬が段ボールから出てしまい、近くの車道を歩き始めました。 この子犬は子供たちはまだ気が付いていませんが、目が見えないのです。車にひかれそうになる事も何度もありました。  道路で子犬を見つけた二人のノゾミちゃんは、子犬が道路に出ないように首輪をして紐で繋ぎましたが、紐がぐるぐる巻きになったり、置いてある自転車にぶつかったりします。  『この犬やっぱり少し変だよ』  『もしかすると目が見えないんじゃないのかな』  『坂本のじっちゃんに怒られるかもしれないけど相談しよう』  ということになり、坂本さんのところに二人のノゾミちゃんと犬を連れて行きました。  一瞬坂本さんは怒ったようになりましたが  『このままじゃ、この子犬死んじゃうよ!おじいちゃん、お願い!なんとかして』  二人のノゾミちゃんは必至で訴えかけました。  坂本さん個人は何とかしてやりたかったのですが周囲の反応は、良くない方向に進んでいました。数人の住民から駐輪場で子供たちが犬を飼っているのを注意して欲しいという苦情が寄せられていたのです。  坂本さんは自治会長としての立場と二人のノゾミちゃんの気持ちを一番分かっている大人としての立場に悩まされました。坂本さんは、潮見小学校の校長先生や動物園の園長さんなどにいろいろ意見を聞きました。  そして次の様な張り紙をしました。  『子犬を引き取ってくれる知り合いがおられる方はいないでしょうか?もし引き取り手がいない時は団地に小屋を建てて飼ってもよいでしょうか?』  坂本さんは団地の住民を一軒一軒回って説明しました。 子供たちは手分けして近所にこの子犬の存在を伝えるビラを配りました。  ですが住民の意見はほとんどが反対の意見ばかりです。 かといってこのまま見捨ててしまう訳には行きません。 状況にはお構いなしに子犬は一日一日を生きていかなければ行きません。  坂本さんは最後の方法として住民に集まってもらいました。  その集まりの場で坂本さんは  『この子犬は目が見えなくて捨ててしまうとすぐに死んでしまう可能性が高いのです、子供たちと私で責任を持って飼うから認めて欲しい』  と集まった住民たちに頭を下げました。 坂本さんの横には二人のノゾミちゃんと子犬も一緒にいました。  ですが集まった住民たちは規則は規則だから。と中々認めようとはしませんでした。 全く聞く耳を持ってくれませんでした。  二人のノゾミちゃんが叫ぶように大人たちに語ったのはそんな時でした。  望ちゃんが  『この犬、目が見えないの、捨てたら誰も拾ってくれないよ』  希ちゃんが  『この前、幼稚園で先生が、盲導犬の話をしてくれたよ。盲導犬はね、目の見えない人をちゃんと助けるのよ。そして、人ととっても仲良しなのよ。それなのにどうして、この犬を助けちゃいけないの。どうして助けちゃいけないの。人がどうして目の見えない犬を助けちゃいけないの?』  望ちゃんも  『じいちゃん。あのね、目の見えない人を助ける犬はいい犬だよね。だから、目の見えない犬を助けるのも、いいことなんだよね。捨てるほうが悪いんだよね』  二人のノゾミちゃんは子犬を床におろしました。 子犬はクンクンと泣きながら同じ所をぐるぐる回っています。いつもの子犬の動きでした。  二人のノゾミちゃんは言いました。  『この子犬は目が見えないからこんな風にしか動けないの』  『このまま一人っきりにしてしまうと死んでしまうの』  そして坂本さんが  『社会のルールを破ったり、常識がないことはいけないことです。しかし、ルールや常識を超えていくのは、いけないことではないような気がします。今回の目の見えない犬のことは、ルールを守らないのではなく、ルールを越えていくことだと。今回は犬を飼うのではなく、子供たちが大人になって飼えるまで一時預かるんです。皆さん、どうかルールを超えた所で皆さんの温かい気持ちでこの子犬を見守ってやれないでしょうか?』  と深々と頭を下げました。  すると、今まで反対していた住民の一人が  『分かりました』  とポツリと言いました。そしてその人はくるくる回り続けている子犬を見て涙を流しながら  『早く止めてやって下さい、抱いてあげて下さい』  と言ってくれました。  そして住民たちからパラパラと拍手が一斉に起きました。やがてその拍手は大きな拍手へと変わっていき住民たちの温かい思いやりの気持ちが3人と1人に届いて涙に変わりました。  数日後、坂本さんが市への願い出て、松山市から団地で犬を飼う特別の許可がおりました。  こうして子犬は『団地の犬』になることができました。  中庭にはの片隅に犬が歩き回るぐらいのスペースが空いており、そこに坂本のじっちゃんが素敵な犬小屋を作ってくれました。  せっかく正式に飼える様になったのできちんと名前をつけなければとなり、  小学5年生の淳子さんが提案した  『団地の犬だから”ダン”がいい』  という名前にみんなの気持ちが集まりました。  坂本さんは思いました。  『ダンは犬を飼いたくても飼う事ができない日本中の団地の子供たちの思いが刻まれている』  ダンが団地の犬になって3年後、希ちゃんと望ちゃんがこのお話を紙芝居にしました。  この紙芝居は愛媛子供の文化研究会の紙芝居コンクールで最優秀賞に選ばれました。  そして早速新聞に取り上げられ、テレビや雑誌でも報道されるようになりました。こうしてダンのニュースは全国へと広がっていきました。  日本全国から、藤吉団地を訪ねたり『えさ代や予防接種代にしてください』とお金を送ってくれている人もいました。  ダンはみんなに愛されて6年が過ぎました。 坂本さんとダンの獣医さんの吉沢先生は、こんなことを話しました。  『この犬は運が良かったとしか言いようがないわ。死んでしまうはずのこの犬が、こんなに多くの方々に気にかけてもらうようになったのじゃからなぁ』  『でもね坂本さん。有名になればなるほど『ダンの物語』は現実のダンと離れて一人歩きしていますよ。紙芝居から始まって、新聞・雑誌・テレビ・本……。感動的な実話として『ダンの物語』は発展してほしいです。 けれども、現実のダンはただの犬ですから、物語とは別に犬らしい生活を送ってほしいと思うんです』  そして1999年4月19日。 ダンは坂本じっちゃんの『あずかり犬』から『飼い犬』になりました。  ダンを拾った石井希さんは中学生になり、久保田望さんは団地から引っ越して行きました。  タイトルにも書きましたが二人のノゾミちゃんの名前、希と望。 合わせると希望になる事に気付いている人もいると思います。  素敵な偶然ってあるもんですね。  ダンにとってはまさに希望の二人だったわけですから。  --------------------------------------------  非常に心が温かくなるお話でした。  社会のルールや常識を「破る」のではなく、「越えていく」。  尊い、かけがえのない命を守ろうと必死だった二人のノゾミちゃん。彼女たちの行動は、1人の心を動かし、最後には日本中の人の心を動かしました。 多くの人に愛されて、ダンは本当に幸せだったことでしょう。  たかが一匹の犬、それど一匹の犬。 命の重さに違いはありません。 かけがえのない命を大切にしなくちゃいけませんね。  よかったら、シェアをお願いします。
「希望の犬」


愛媛県松山市に市営の団地があります。

1993年の夏、この団地に住んでいる石井希ちゃんと久保田望ちゃんは幼稚園からの帰り道の川で流れている

『小さな命』

に出会いました。

二人のノゾミちゃんは流れていく段ボールが気になり、川岸に引き寄せて段ボールを拾い上げました。そして二人で恐る恐る段ボールの中を見てみると、中には小さな白い子犬が不安そうな表情で入っていました。

二人は段ボールからその子犬を出してあげました。
そして地面に立たせてあげました。生後間もない男の子でした。
すると子犬は何故か同じところをぐるぐると回ってばかりいました。

二人は

『回るのが好きな犬なんだね、変ってる』

『でもこのままほっといたら死んじゃうよ』

と言いながら帰り道を歩きました。

そしてそのまま二人で久保田望ちゃんの家に連れて帰りました。
すると当然のように望ちゃんのお母さんに

『団地だから犬を飼ってはいけないの』

とあっさり言われてしまいました。
市営団地だったのでペットは禁止だったのです。

そこで、二人は子犬を『じっちゃん』と呼んでいつも親しくしていた団地の自治会長の坂本さんのところに連れて行きました。

坂本さんは子犬を抱きあげて

『ほう、捨て犬か』

と子犬を優しく地面に立たせてやりました。
すると子犬は塀にぶつかったり置いてある自転車にまでぶつかったりしました。

坂本さんは思いました。
この犬は目が見えないのではないか?と。
そう坂本さんが思っていると二人が聞いてきました。

『団地で飼ってもいい?』

と。

坂本さんは頭の中で色々な思いが錯綜しながらも

『団地では犬や猫を飼ってはいけないという規則があるんだよ。
お父さんお母さんに話して、団地の人の知り合いで飼ってくれる人を探しなさい』

と二人に言うしかありませんでした。

二人はすぐ家に帰って知り合いを探してみましたが、飼ってくれる人は見つかりませんでした。

再び坂本さんの所へ行きました。
坂本さんも困った顔になりながら

『元の場所にもどしておいで』

というしかありませんでした。

坂本さんは心では、かわいそうと思いましたが、自治会長の自分がルールを破ることはできないので、そう言わざるを得ませんでした。

その時近くを大切に飼われているような犬が通りました。
それを見た望ちゃんの

『同じ犬なのに捨てられたり、飼われたりするのは変だよね』

と言う言葉に坂本さんは何も答えられませんでした。

二人は白い犬が捨てられた川まで戻り段ボールに再び入れようとしましたが

『このまま川に流すのはひどすぎるよ』

『じゃ、岸に置いていこうか』

と言って岸に置こうとしました。
そして立ち去ろうとしました。
すると子犬がクンクン泣きました。

二人のノゾミちゃんはこのまま歩く事は出来ませんでした。

『やっぱり、かわいそうだよ』

このまま置いていくと車にひかれたり迷い子になって、ケガをするかも知れません。
そう思った二人のノゾミちゃんは、大人たちには内緒で団地のそばの自転車置き場で子犬を飼い始めました。

団地に住む子供たちと協力して。見つからないように段ボールに入れて、子供たちが当番制で餌をあげるようにしました。

ところが子供たちが幼稚園に行っている時に、子犬が段ボールから出てしまい、近くの車道を歩き始めました。
この子犬は子供たちはまだ気が付いていませんが、目が見えないのです。車にひかれそうになる事も何度もありました。

道路で子犬を見つけた二人のノゾミちゃんは、子犬が道路に出ないように首輪をして紐で繋ぎましたが、紐がぐるぐる巻きになったり、置いてある自転車にぶつかったりします。

『この犬やっぱり少し変だよ』

『もしかすると目が見えないんじゃないのかな』

『坂本のじっちゃんに怒られるかもしれないけど相談しよう』

ということになり、坂本さんのところに二人のノゾミちゃんと犬を連れて行きました。

一瞬坂本さんは怒ったようになりましたが

『このままじゃ、この子犬死んじゃうよ!おじいちゃん、お願い!なんとかして』

二人のノゾミちゃんは必至で訴えかけました。

坂本さん個人は何とかしてやりたかったのですが周囲の反応は、良くない方向に進んでいました。数人の住民から駐輪場で子供たちが犬を飼っているのを注意して欲しいという苦情が寄せられていたのです。

坂本さんは自治会長としての立場と二人のノゾミちゃんの気持ちを一番分かっている大人としての立場に悩まされました。坂本さんは、潮見小学校の校長先生や動物園の園長さんなどにいろいろ意見を聞きました。

そして次の様な張り紙をしました。

『子犬を引き取ってくれる知り合いがおられる方はいないでしょうか?もし引き取り手がいない時は団地に小屋を建てて飼ってもよいでしょうか?』

坂本さんは団地の住民を一軒一軒回って説明しました。
子供たちは手分けして近所にこの子犬の存在を伝えるビラを配りました。

ですが住民の意見はほとんどが反対の意見ばかりです。
かといってこのまま見捨ててしまう訳には行きません。
状況にはお構いなしに子犬は一日一日を生きていかなければ行きません。

坂本さんは最後の方法として住民に集まってもらいました。

その集まりの場で坂本さんは

『この子犬は目が見えなくて捨ててしまうとすぐに死んでしまう可能性が高いのです、子供たちと私で責任を持って飼うから認めて欲しい』

と集まった住民たちに頭を下げました。
坂本さんの横には二人のノゾミちゃんと子犬も一緒にいました。

ですが集まった住民たちは規則は規則だから。と中々認めようとはしませんでした。
全く聞く耳を持ってくれませんでした。

二人のノゾミちゃんが叫ぶように大人たちに語ったのはそんな時でした。

望ちゃんが

『この犬、目が見えないの、捨てたら誰も拾ってくれないよ』

希ちゃんが

『この前、幼稚園で先生が、盲導犬の話をしてくれたよ。盲導犬はね、目の見えない人をちゃんと助けるのよ。そして、人ととっても仲良しなのよ。それなのにどうして、この犬を助けちゃいけないの。どうして助けちゃいけないの。人がどうして目の見えない犬を助けちゃいけないの?』

望ちゃんも

『じいちゃん。あのね、目の見えない人を助ける犬はいい犬だよね。だから、目の見えない犬を助けるのも、いいことなんだよね。捨てるほうが悪いんだよね』

二人のノゾミちゃんは子犬を床におろしました。
子犬はクンクンと泣きながら同じ所をぐるぐる回っています。いつもの子犬の動きでした。

二人のノゾミちゃんは言いました。

『この子犬は目が見えないからこんな風にしか動けないの』

『このまま一人っきりにしてしまうと死んでしまうの』

そして坂本さんが

『社会のルールを破ったり、常識がないことはいけないことです。しかし、ルールや常識を超えていくのは、いけないことではないような気がします。今回の目の見えない犬のことは、ルールを守らないのではなく、ルールを越えていくことだと。今回は犬を飼うのではなく、子供たちが大人になって飼えるまで一時預かるんです。皆さん、どうかルールを超えた所で皆さんの温かい気持ちでこの子犬を見守ってやれないでしょうか?』

と深々と頭を下げました。

すると、今まで反対していた住民の一人が

『分かりました』

とポツリと言いました。そしてその人はくるくる回り続けている子犬を見て涙を流しながら

『早く止めてやって下さい、抱いてあげて下さい』

と言ってくれました。

そして住民たちからパラパラと拍手が一斉に起きました。やがてその拍手は大きな拍手へと変わっていき住民たちの温かい思いやりの気持ちが3人と1人に届いて涙に変わりました。

数日後、坂本さんが市への願い出て、松山市から団地で犬を飼う特別の許可がおりました。

こうして子犬は『団地の犬』になることができました。

中庭にはの片隅に犬が歩き回るぐらいのスペースが空いており、そこに坂本のじっちゃんが素敵な犬小屋を作ってくれました。

せっかく正式に飼える様になったのできちんと名前をつけなければとなり、

小学5年生の淳子さんが提案した

『団地の犬だから”ダン”がいい』

という名前にみんなの気持ちが集まりました。

坂本さんは思いました。

『ダンは犬を飼いたくても飼う事ができない日本中の団地の子供たちの思いが刻まれている』

ダンが団地の犬になって3年後、希ちゃんと望ちゃんがこのお話を紙芝居にしました。

この紙芝居は愛媛子供の文化研究会の紙芝居コンクールで最優秀賞に選ばれました。

そして早速新聞に取り上げられ、テレビや雑誌でも報道されるようになりました。こうしてダンのニュースは全国へと広がっていきました。

日本全国から、藤吉団地を訪ねたり『えさ代や予防接種代にしてください』とお金を送ってくれている人もいました。

ダンはみんなに愛されて6年が過ぎました。
坂本さんとダンの獣医さんの吉沢先生は、こんなことを話しました。

『この犬は運が良かったとしか言いようがないわ。死んでしまうはずのこの犬が、こんなに多くの方々に気にかけてもらうようになったのじゃからなぁ』

『でもね坂本さん。有名になればなるほど『ダンの物語』は現実のダンと離れて一人歩きしていますよ。紙芝居から始まって、新聞・雑誌・テレビ・本……。感動的な実話として『ダンの物語』は発展してほしいです。
けれども、現実のダンはただの犬ですから、物語とは別に犬らしい生活を送ってほしいと思うんです』

そして1999年4月19日。
ダンは坂本じっちゃんの『あずかり犬』から『飼い犬』になりました。

ダンを拾った石井希さんは中学生になり、久保田望さんは団地から引っ越して行きました。

タイトルにも書きましたが二人のノゾミちゃんの名前、希と望。
合わせると希望になる事に気付いている人もいると思います。

素敵な偶然ってあるもんですね。

ダンにとってはまさに希望の二人だったわけですから。

——————————————–

非常に心が温かくなるお話でした。

社会のルールや常識を「破る」のではなく、「越えていく」。

尊い、かけがえのない命を守ろうと必死だった二人のノゾミちゃん。彼女たちの行動は、1人の心を動かし、最後には日本中の人の心を動かしました。
多くの人に愛されて、ダンは本当に幸せだったことでしょう。

たかが一匹の犬、それど一匹の犬。
命の重さに違いはありません。
かけがえのない命を大切にしなくちゃいけませんね。